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合成音声の音楽に、言の葉を捧ぐ:詩的なボカロ曲レビューサイト

稲むり「うらみ交信」


【推敲中】エレクトロの調子のある、微妙によれたポストパンクあろうか。死者との交信という主題は暗いニュアンスがあるが、ここでは黄昏のような残照が、どこまでも影をひいている。生存の逆再生としての死。その交錯を見事に描き出し、それをポップにまとめているという点において、稀有の楽曲といってよいだろう。 (utakiki)


おあがり「 やさしさにつつまれてくれ」


ぼっちに舞いおりた、メロウな夜のポップスであろうか。ひそやかな願いと、優しい冷たさと。昨日とは色合いの違った明日への扉を、惜しみつつも開けはなつような、爽やかなセンチメンタルが心地よい。人生とは、いつだってそんなものだろ…… とでも言うように。そして思い出はつみかさなってゆく。こんな大都会の、出会い頭のそのたびに。(utakiki)


ondo「Darling」


晴れやかに恋に浮ついた、リズミカルな冬のポップスだ。それにつけても、恋愛とは不可思議なものである。ありふれた日常の光景の色合いが、ある他者の存在ひとつでまったく変わってしまう。風に吹かれた木漏れ日のぬくもありが、こんなにも暖かだったなんて。もし願わくば、君が同じ気持ちでいてくれたなら…… このままどうにでもなってしまおう。はるかに墓場までも。(utakiki)


白晝堂々「 Y字路のあいつ」


【推敲中】爽やかに寂しげな、歌ものポストロックである。君のいなくなった街で、花は咲き、そして散る。その変化のなさにいたたまれなくなった、僕もまたここを離れよう。そんなある巣立ちの歌であろうか。そして人生という旅の途中へと。放浪に誘うような、ギターの渇いた音響がよい。(utakiki)


Metolona「揺れる」


優しい音色の歌ものエレクトロニカだ。ささいな波紋に感情が揺れること、世界がそこに投影されてあること。それは代わりようのない、生命のあかしだ。たとえ非実在の存在であったとしても。自分は自分でしかなく、他者は他者のまま、やがて別離のときがくる。夜明けの風の爽やかさのような音楽である。(utakiki)