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合成音声の音楽に、言の葉を捧ぐ:詩的なボカロ曲レビューサイト

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

Torero、夜行梅「Holidays^3」

連休初日の雰囲気のゆるいチルホップですね。とあるホリデーの情景が、それぞれの心情とともに、生き生きと浮かびあがってきます。誰しも時間に追いたてられる現代社会にあって、せめて休日だけは束縛されずにいたい。音と言葉にはあらわれない、たしかな意…

西島尊大「SOMNIA」

どことなくフュージョンの調子のある、お洒落なポップスである。しかしその喚起する感情は、どこまでも儚く甘酸っぱい。鮮やかな記憶の夢に、目の前の光景はモノクロへと色あせてしまう。ただひとつ言えることは、あの過去があればこそ、いまここに私はこう…

べこ「魚の群れは夜もすがら」

どことなくモダンの調子のある、お洒落にダウナーな歌ものポップだ。残酷であればこそ、美しくもある世界にあって。生存とは、そもそも病理なのだという、その諦念は潔い。そして満身に傷を負いながらも、運命を見届けるために泳いでゆく。ある死生観がここ…

Rulmry.「ライトクラブ」

明るくリズミカルなポップミュージックだ。こんな半端な世のなかだから、半端な存在でもかまやしない。ただ自分はどこまでも、自分らしくはありたいだけ。そのためのクラブとビートのある生活は、きっと楽しいものだろう。誰かと一緒の回り道も、うらやまと…

フロクロ「私を解決しないで」

ニューウェーブの調子のある、淡いエレクトロポップチューンである。どれほど精緻に科学が発達しようとも、人間には割りきれないものがある。それは私にとっての、私という存在だ。そして私の感情は、類型化されたパターンとして判断されることを、前論理的…