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合成音声の音楽に、言の葉を捧ぐ:詩的なボカロ曲レビューサイト

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

こえだ、「お茶濁しバトル」

でこぼこな疾走感のある、ローファイなよれよれポップチューンだ。ふだんの生活ではそれと意識しなくても、暮らしの裏に息をひそめている非常事態。その急転直下に切り替わるタイミングをとらえた音楽であろうか。個人の感情にはお構いなしに襲ってくるそい…

二錠「エル」

冷たい痛みのある、淡い歌ものエレクトロニカだ。病床というメルヘンで、融解してしてゆく世界。身体という絆で結びついていた、貴方という存在もまた、それにつれこぼれ落ちてゆく。これが人生の結末なのだろうか。そんな疑念すら溶けてしまう、甘美なる死…

はこ「百葉箱」

思わずスキップしたくなるような、リズミカルなポップトロニカだ。天気をみまもる生活は、この大都会のうちにあっても、私たちは自然とともにあることを実感させてくれる。そしてここに生きている、人ならざる幾多の生命の存在にも。でもこのとりとめのない…

バラバラ「Pierce」

爽やかに甘酸っぱい歌ものポップスだ。ある他者の不在が、ぽっかりと心に空けてしまった、けして埋まりそうにない穴がある。やがてはこの空虚と失くした耳飾りだけが、貴方との結びつきの記憶となる。それをどこかで予感しながらも、いまはひたすらに踊って…