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合成音声の音楽に、言の葉を捧ぐ:詩的なボカロ曲レビューサイト

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

はこ「巣箱」

明るくリズミカルなエレクトロポップだ。それでいて日の翳るような憂愁感も、そこはかとただよっている。かわり映えのない日々の生活と、こんな暮らしはいつまでもつづくものじゃないという感覚と。別れてしまえば、それは別れになるが、別れるまでは別れで…

Sebon「Flat4」

どことなくポストロックの調子のある、淡いエレクトロポップチューンである。それは明瞭に知覚された、夢の世界を探求してゆくような。空間はもちろんのこと、時間に縛られることもなく。それでいて荒唐な無秩序というわけもなく、夢としての理路がある。言…

Dera「ダーウィン」

伸びやかなメロディと音色の、芳しい歌ものポップスだ。思いがけない期待でふくらんでゆく風船のように、このまま空までも飛んでゆくような。視界には紛れもない現実がありながら、心ははるか遠くにあるような。もうこの空から堕ちたってかまわない。そうし…

quoree「動物」

冬の地下鉄構内のような、淡い音響のエレクトロニカである。都市のうちにありがなら、そこでの人間の営みを、外部から冷たく眺めている。それは他者の喪失すらも、平然と受け入れてしまう冷たさかもしれない。そのとき私は、社会から疎外された存在という意…

quoree「透明」

涼しげな透明感と、まろやかな酩酊感とが折り重なり、淡い音響に瀰漫するエレクトロニカである。この思慮の先に、どのような感情が待っているのか。人はそれと知らずに、心の頁をくってゆく。そこにあふれくる言葉たちは、あるイマージュを形づくっては、次…