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合成音声の音楽に、言の葉を捧ぐ:詩的なボカロ曲レビューサイト

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

二錠「恋情はエス」

冷たい質感の心地よい、リズミカルなエレクトロニカである。二つの感情が、惹かれあいながらもゆき違い、それでいて千切れることなく絡まりあっている。かつは冷静に感情を分析しながらも、けしてコントロールされることはない行動。ここにはある段階におけ…

J・ミラ「人類はヒッポリトです。」

ローファイな音響の心地よい、歌ものエレクトロニカ。つぎはぎだらけの情報のコラージュで装われた、孤独なる演者の自意識は、誰にもそれと知られぬまま、やがてはこの演目も終わる。真実を知るイマジナリーフレンドは、自分のなかの自分であって。これは現…

油屋大繁盛「だいなし」

よれよれなローファイ加減のよき、現代の歌ものフォークと言ってよいだろうか。こうあるはずだった日常と、こうなるしかなかった現実との、埋めようのない齟齬を、何食わぬ顔で踏みこえながら、人は生きてゆかねばならない。しかしその齟齬は消えるわけもな…

よ。「オプティミズムなステップで」

リズミカルに抑揚のきいた、朗らかな歌もの。もう一人の自分に贈る、自分からのメッセージのように、ひとつの視線に優しさと厳しさが込められている。人は弱くもあり、それでいて強くもある存在だ。負の感情マゾヒズムから抜けだすための、心のキラキラをあ…

宮沢空「ピクニック・デイ」

エレクトロニカな音響の、爽やかなポップソングである。たとえ相手が人であっても、なかったとしても、ともに生きるパートナーのいる生活はよいものだ。たいていの人は、純粋に自己のためだけには、生きられない存在なのだから。ペイントで描いたイラストの…