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合成音声の音楽に、言の葉を捧ぐ:詩的なボカロ曲レビューサイト

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ふるがね「あなたには見えない」

清廉にイノセンスなエレクトロトランスである。あなたには見えないもの、それはわたしだけの感情の機微であろうか。ちょっとした表情やそれとない仕草を、他者はさまざまに解釈してくれる。しかしそれすらも見られるための表現ではないと、いったい誰に言え…

コットタウン「オリ」

エレクトロニカな音響の、淡いイノセンス音楽であろうか。またはメロディのあるポエトリーか。ゆっくりとすぎる時の流れに、内面の独白がとりとめもなく折り重なる。それは空間と戯れている、ひとひらの羽毛のようだ。孤独でありながら、どこまでも自由であ…

hena「rebellion」

アンニュイでありながらメロウでもある、ダウナーなポップブルースだ。世界と精神の調和の崩れたとき、どう人はそれを表明したらよいのか。なにをやっても爪はじきに遭うだけだとすれば。しかし世界からの逃走は、同時に闘争でもある。そして私の遺体は、と…

みきとP「僕は依存症」

どことなくエレクトロニカの調子のある、歌ものロックポップだ。青春の絆によって結びついた、聖化されたイマジナリーフレンドの残像。別れるべき時はとっくに過ぎ去って、さかしまに離れられなくなった。でも僕はもう、君を十字架にかけることにしたよ。い…

r-906「あまもや」

爽やかな夜のシティポップだ。あたかも映像のような大都市の無機質と、そこを高速で移動する感情の有機体と、すべてを濡らしてゆく冷たい霧雨の自然と。そして融解してゆく日常のリアリティ。しかしそれは夢幻ではなく、どこまでも現実の地平を走り抜けてゆ…