vocanoha

合成音声の音楽に、言の葉を捧ぐ:詩的なボカロ曲レビューサイト

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

Metolona「揺れる」

優しい音色の歌ものエレクトロニカだ。ささいな波紋に感情が揺れること、世界がそこに投影されてあること。それは代わりようのない、生命のあかしだ。たとえ非実在の存在であったとしても。自分は自分でしかなく、他者は他者のまま、やがて別離のときがくる…

m.tomi「いつか」

ここではないどこかへと空想を誘う、民族調のエレクトロニカだ。それはファンタジックというよりも、逝きし代の精神世界への憧憬とでも言うべきであろうか。しかし継ぎはぎされた過去のモザイクは、同時に無意識の未来でもあるかもしれない。まったく内面へ…

mochy「ユタ」

すべての悔恨をあらい流してゆくような、爽やかなギターポップだ。ここにある孤独な人間が、それでも世界に生きようとするとき、他者としての声が必要になることがある。なにがあっても、僕はキミの味方だよとささやいてくれるような。自意識のない合成音声…

Sebon「涼しさ」

どことなくフュージョンの調子のある、淡くもダウナーなポップスだ。こんなモノクロの世界で、ばらばらになってしまった。いまさらに思い知ったのは、君が存在してこその、僕であったということ。しかし君にとってはどうなんだ。つのってゆく不安と疑心。そ…

神尾けい「ゲルマニウムの夢」

鉱石のように美しい、ポストロックの歌ものである。芸術の求道のはたてにあるものが、インターネットに投影された怪物であったとしても、そこにすべてを捧げてやる。さあ美味しく僕を喰らってくれ。そして僕はお前の夢となるだろう。それは希望ではないが、…

gunyo「箱舟」

どこまでも軽やかにリズミカルなポップチューンだ。まだ空想でしかない恋の予感。それをいまに成就しても不思議でないと信じきっている、あの無邪気な感覚。まだ運命の分かれ目とまでゆかない、一歩手前のゆるふわがひたすらに心地よい。例えばバスルームで…